今回は、土地活用や店舗開発を進める上で避けて通れない「近隣問題」についてお話ししたいと思います。特に、建築前の段階で発生する問題に焦点を当てていきますね。
私自身も、この近隣問題で多くの時間や費用を費やし、時には無理難題を突きつけられることもありました。
「法律に問題ないのに、なぜ工事が止まるの?」
地主様からよく聞かれるのが、「法律に違反していないのに、なぜ工事が進まないんだ?」という疑問です。
確かに、日照問題、境界線、土壌汚染など、法的にはすべて整備されている場合でも、近隣問題が解決しないと工事に着手できないケースがあるんです。
これは法律というよりも、市町村の条例で開発許可の条件として「近隣住民との話し合いによる問題解決」が求められることが多いからです。つまり、問題が解決しないと開発許可が下りず、結果的に工事が始められないという事態になってしまうんですね。
開発許可の権限を持つのは知事や指定都市の市長ですが、その対応は自治体によって様々です。一定期間の調整期間が過ぎれば自動的に許可が下りる場合もあれば、近隣住民との協定書作成が条件となることもあります。
「近隣説明会」って何をするの?
近隣から意見が出た場合、または自治体によっては意見がなくても開催を求められるのが「近隣説明会」です。
これは、地域の公民館などを借りて、近隣住民(自治体によっては、指定された範囲の住民)を招き、今後の開発計画を説明する場です。10人から30人、時には100人規模になることもあります。
この説明会は、建築主である地主様が主催者として執り行うものです。
地主様は説明会に出るべき?約束はできるの?
さて、ここで重要なポイントです!
出席者から地主様(家主)の出席を求められることもありますが、実は家主は説明会に出席しない方が良いです。その理由は、家主が約束できることはほとんどないからです。
よくある質問として、以下のようなものがありますが、これらは家主が約束すべきことではありません。
- 工事中のこと:
- 通学路にガードマンを配置してほしい。
- 工事時間を〇時から〇時までにしてほしい。
- 土日祝日は休業してほしい。
- →これらは、あくまでも「建設会社」が約束することです。
- 建物完成後のこと(店舗などの場合):
- 営業時間を〇時から〇時までにしてほしい。
- 〇〇のような商品を置かないでほしい。
- ゴミ出しの方法をこうしてほしい。
- →これらは、あくまでも「テナント」が約束することです。
近隣の方からすれば、地主様は工事会社への発注者であり、テナントへの貸主でもあるため、「地主様が約束してほしい」と言われることが多いですが、実際には地主様が何も約束できることではありません。
専門家は、これは役所が近隣住民に説明すべきことを地主様に責任転嫁している側面もあると指摘しています。
残念ながら、近隣説明会で具体的な問題解決に向けた話し合いができることはほとんどなく、多くの場合、住民から一斉に意見が出るだけで終わってしまうのが実情だそうです。
まとめと地主様へのアドバイス
地主様の中には、現場の近くに住んでいるため、近隣の方に直接説明したいと考える方もいらっしゃいますが、地主様が近隣の方に直接約束できることは何もありません。
ですので、具体的な約束事は建設会社やテナントに任せることを強くお勧めします。
近隣問題は非常に複雑で、ケースバイケースの対応が必要ですが、この情報があなたの土地活用の一助となれば幸いです。