今回は、意外と知られていない**「ロードサイド店舗の家賃の決まり方」**について、詳しく解説していきます。土地活用をお考えの地主様や、ロードサイド店舗への出店を検討中のテナント様にとって、大変興味深い内容となるはずです。
賃貸マンションとは大違い!ロードサイド店舗の家賃は「相場」がない!?
まず、驚かれるかもしれませんが、実はロードサイド店舗には**「家賃相場」という考え方自体がありません**。
賃貸マンションであれば、「駅からの距離」や「間取り」が似ている物件を参考に家賃を決められますよね。しかし、ロードサイド店舗は、土地の広さも建物の規模も同じような物件がほとんど存在しないため、「あの土地がいくらで貸されているらしい」といった噂話程度しか参考にできるものがないのが現状なんです。
では、一体どのようにして家賃が決められるのでしょうか?
地主様の家賃の考え方:最高額で決まる!
土地活用の場合、家賃は賃貸マンションのように地主様が一方的に「この値段です」と提示するものではありません。複数のテナントから同時に申し込みがあった場合、提示された複数の家賃の中から、最も高い家賃で決まるのが一般的です。つまり、相場の平均値ではなく、**「最高の地代を出したところで決まる」**のが土地活用における家賃の決め方なのです。
地主様が家賃を考える際の具体的なケースを見ていきましょう。
- 土地活用(新たに建物を建てる場合)の期待値
- 周辺の月極駐車場相場を参考にします。例えば、300坪の土地を月極駐車場として貸した場合、1台1万円で35台駐車できるなら、月35万円の収入になります。
- ロードサイド店舗として活用する場合、この駐車場収入の「期待値」をかけ合わせます(例:駐車場の2倍の期待値で70万円)。
- さらに、建築費の償却分を上乗せします。例えば、建築費4800万円を20年(240ヶ月)で償却すると、月20万円です。
- これらを合計した金額が、地主様の期待する家賃となります(例:70万円+20万円=90万円)。
- 土地を購入する場合の期待値
- 例えば、300坪の土地を坪60万円(総額1億8000万円)で購入した場合を考えます。
- この土地から期待する利回り(例:7%)を計算し、月額に換算します(例:1億8000万円 × 7% ÷ 12ヶ月=105万円)。
- これに建物建築費の償却分を足したものが、地主様の期待する家賃となります(例:105万円+20万円=125万円)。土地活用に比べて高くなる傾向があります。
- 居抜き物件の場合
- すでに建物がある居抜き店舗の場合、建物の面積の坪単価と駐車場の料金から家賃を考えます。
- 例えば、60坪の建物で坪単価1万円、駐車場20台で1台1万円の場合、建物分60万円+駐車場分20万円で、合計80万円が期待する家賃となります。
テナント側から見ると、**「居抜き物件が最も安く借りられ、次が土地活用物件、一番高いのが土地購入物件」**という順番になります。
テナント様の家賃の考え方:売上がすべて!
では、テナント様は家賃をどのように考えているのでしょうか?彼らは、土地の価格や建築費などは一切考慮しません。テナント様が考えることはただ一つ、「ここに店を出したら、どれくらいの売上が見込めるか」、この一点に尽きます。
具体的な計算方法は以下の通りです。
- 飲食店の場合: 月の売上の**約10%**が家賃の目安と言われています。これは「3日分の売上が家賃に相当する」という考え方と同じです。
- 例えば、月800万円の売上を見込むファミレスであれば、その10%である80万円が家賃となります。
- この売上見込みには、建物の広さや駐車場の台数だけでなく、周辺人口、前面道路の交通量、競合店の状況など、様々な要因が関係してきます。
- 物販店の場合: 業種によってバラバラですが、一般的に飲食店舗と比べて客単価は高いものの、利益率が低い傾向にあるため、売上に対する家賃の割合は5%程度など、低めに設定されることが多いです。
異なる「本音」の間に「接点」を見つけることが重要!
お気づきでしょうか?地主様とテナント様では、家賃に対する考え方が全く異なります。地主様は「投資に対するリターン」を、テナント様は「売上に対する負担」を考えているのです。
この異なる考え方を持つ両者の間で重要なのが、**「お互いが許容できる家賃の範囲に接点があるか」**という点です。
無理にこの接点を作り出そうとして、不動産会社や建築会社がテナントに無理な家賃を支払わせたり、地主様に建築費を操作して安い家賃でも大丈夫だと偽ったりすると、テナントの安定経営が難しくなるリスクがあります。
私たちのような専門家の仕事は、この地主様とテナント、双方にとって無理のない「接点」を見つけ出すことだと考えています。
ロードサイド店舗の家賃は奥深いですね。今回の解説が、皆様の土地活用や出店の参考になれば幸いです!