【トラブル回避!】テナント物件の修繕費、賃貸借契約でどう決める?

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テナント物件の賃貸経営をされているオーナー様、あるいはこれからテナントとして物件を借りる予定の方へ。賃貸物件で意外と多いトラブルの元が、建物や設備の修繕費の負担についてです。

「照明の電球が切れた」「排水管が詰まった」「雨漏りがした」——これらの修繕費用、誰が負担するべきだと思いますか?実は、住居(マンションなど)とテナント(店舗など)では、考え方が少し異なる場合があるんです。

今回は、特にテナント物件に特化して、賃貸借契約における修繕責任のポイントを解説します。

貸主の「修繕義務」とは?

民法では、物を貸す側(貸主)は、その物がきちんと使える状態で賃貸することが前提とされています。そのため、もし貸した物が壊れて使用に支障が出た場合、貸主は修繕をしなければならないと定められています。これを「貸主の修繕義務」と呼びます。

しかし、ここが重要なポイントです!

「特約」が修繕義務を変える!

民法上の貸主の修繕義務は「任意規定」とされており、貸主が修繕義務を負わないという「特約」は有効であるとされています。

つまり、賃貸借契約書に特約として盛り込まれていれば、貸主に修繕義務はなく、借りる側(賃借人、つまりテナントさん)の負担で修繕を行うことになるのです。

だからこそ、賃貸借契約書での修繕費の取り決めが非常に大切になるわけです。

トラブルを避ける!推奨される修繕費負担の取り決め方

では、具体的にどのような取り決めをすれば、後々のトラブルを避けられるのでしょうか?

推奨されるのは、以下のような契約内容です。

  • 修繕費に関する費用は基本的にテナント負担とする
  • ただし、建物の主要構造体(柱、屋根、梁、外壁など)に関する維持修繕費は家主が負担する
  • 例外的に、物件の塗装に関する費用など、特定の項目はテナント負担と定める

簡単に言えば、建物本体(骨組みなど)を除いて、基本的な設備の修繕はテナントが負担するという考え方です。

具体例を見てみましょう。

  • 照明の電球が切れた場合:テナントが負担。
  • 排水管が詰まった場合:テナントが負担。
  • 雨漏りがした場合:これは建物本体に関わるため、家主が負担。

なぜこのような取り決めが良いのでしょうか?

テナント物件特有の事情とメリット

テナント物件の場合、設備の使用頻度は住居と比較にならないほど多いと考えられます。そのため、設備の修繕をテナント負担とする方が合理的だと考えられています。

「それだとテナントが損をするのでは?」と感じる方もいるかもしれません。しかし、設備修繕費をテナント負担とすることで、テナント側にもメリットが生まれる可能性があります。

  • 前のテナントが残した設備をそのまま使用することが、オーナーから認められやすくなる。
  • 入居時にオーナーが設備投資を負担してくれる、といった交渉が可能になる。

賃貸マンションでは、オーナーが先に空調や給湯設備などを設置し、それを魅力として入居者を募集するのが一般的ですが、店舗物件は異なります。オーナーとテナントが十分に話し合い、契約書の中で細かく決めていくことが非常に重要です。

既存の契約書フォーマットに注意!

街の不動産屋さんの中には、店舗物件に不慣れで、宅建協会の住宅用契約書ひな型をそのまま利用する場合があります。このひな型では、マンションと同じように「設備の負担はテナント負担」とされていることが多いです。これは、おそらくテナントビル内の小さなテナントを想定したひな型だと考えられます。

このような契約書をそのまま使用してしまうと、特に大きなテナントに貸す場合には、後々トラブルの元になりかねません。

賃貸期間中にオーナーが最も困ることが多いのが、この修繕負担の部分だと言われています。それだけ、契約書の中での修繕費の負担は非常に大切な部分なのです。

まとめ:契約書はじっくり検討を!

テナントと賃貸借契約を結ぶ際は、ぜひこの修繕費負担の項目について、じっくりと内容を検討するようにしてください。

修繕費の負担を巡る契約は、まるでビジネスにおけるリスクヘッジの保険契約のようなものです。万が一の事態に備え、事前に双方で納得のいくルールを明確に定めておくことで、将来的なトラブルという名の「事故」を未然に防ぎ、スムーズな賃貸関係を築くことができるでしょう。

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