不動産投資や店舗運営に関わる皆さんにとって、消防法は避けて通れない重要なテーマですよね。店舗物件などを賃貸する際、「火災報知器を設置してほしいとテナントから言われた」「消防署から点検・報告を求められた」「不動産会社から説明がなかった」といったトラブルを耳にすることがよくあります。今回は、そんな消防法に関する疑問、「家主とテナント、どちらの責任なのか?」そして「なぜ不動産会社は説明してくれないのか?」について、詳しく解説していきます!
消防法とは?「ハード面」と「ソフト面」の2つの側面
まず、消防法は大きく分けて2つの側面があります。
- ハード面(消防用設備などの設置・維持):消火器、スプリンクラー、自動火災報知器、避難器具、誘導灯、排煙設備などの設備そのものの設置や維持に関する部分です。
- ソフト面(防火管理者による点検・報告):防火管理者を定めて消防計画を作成させ、消防設備の点検や報告を行わせるという管理に関する部分です。
これら「ハード面」と「ソフト面」の両方で、新築や改築工事の際、そして賃貸している間も、家主様に消防法の責任が課せられると考えることができます。
ほとんどの建物が「特定防火対象物」!家主の責任は重い?
消防法でいう「特定防火対象物」とは、不特定多数の人が出入りしたり居住したりする建物のことを指します。例えば、ホテル、病院、福祉施設、飲食店、物販店などがこれに該当します。戸建住宅以外は、家主様が賃貸を考えている建物のほとんどすべてがこの特定防火対象物だと考えて良いでしょう。
家主様が新築や改築をする際、あまり消防の届出を意識していないかもしれませんが、これは建築会社や設計会社が確認申請を出す際に「消防同意」がなければ確認済証が交付されないため、自動的に消防署に報告が入り、指導を受けているからです。この指導により、消火設備、警報設備、避難設備、消火活動上必要な施設といった設備の設置が義務付けられ、検査を受けることになります。つまり、家主様は意識せずとも、新築や改築時には消防法の手続きを行っているわけです。
使用開始後の責任:防火管理者とトラブルの種
建物が使用開始された後は、管理の権限を持つ者が「防火管理者」を定め、その防火管理者に消防計画を作成させ、消防設備の点検と報告を行わせるという決まりがあります。
ここで重要なのが、「この消防法に対応するハード面とソフト面、どちらが家主の責任で、どちらがテナントの責任なのか?」という点です。
実は、消防法では明確に責任が区分されていません。「管理権原者」という表現で「使用者、買い受け人など」と書かれており、どちらでも良いと解釈されています。
個人的な見解としては、建物や設備といった「ハード面」は家主が負担し、点検や報告の「ソフト面」を担当する防火管理者はテナントが担う、という取り決めがスムーズに進むと考えられます。
トラブルを避けるために!契約時の取り決めが最重要
多くのトラブルは、契約時に消防設備の負担や防火管理者をどちらが担当するかを全く決めていないことで起こります。なぜこんなことが起こるのかというと、宅建業法で定める重要事項説明書の中に消防法の説明が含まれていないため、消防法について知らない不動産会社が少なくないという背景があります。
例えば、テナントが入居することで火災報知器の設置が必要になった場合、本来であれば家主負担にすべきだと考えられます。もし、この消防設備の費用を前提として家賃や保証金を決めていれば、特に問題は起こりません。しかし、契約後に「火災報知器を設置しないといけない」と分かると、誰が費用を負担するのかでトラブルが発生してしまうのです。
ですから、家主様は契約前に、この消防法にかかる費用面をしっかりと把握しておく必要があります。消防法は非常に大切なことですが、残念ながら宅建業者の中では軽視されがちだと感じています。
まとめ:契約前の確認がトラブル回避のカギ!
消防法における家主とテナントの責任の所在は、法的には明確に分かれていません。しかし、後々のトラブルを避けるためには、建物の「ハード面」は家主が、日々の「ソフト面」はテナントが担当するという取り決めを、必ず賃貸借契約時に明確にしておくことが何よりも重要です。
これはまるで、家を建てる大工さん(家主)と、その家で生活を始める家族(テナント)の関係に似ています。大工さんは安全な家を建てる責任がありますが、家族は住み始めてから、火の元の管理や定期的な点検を自分たちで行う責任がある、というイメージです。どちらか一方に任せきりでは、いざという時に困ってしまいますよね。
0120-925-104