今回のテーマは、テナント様が店舗を構える際によく使われる「建設協力金方式」についてです。特に、この契約の「期間満了」と「賃料の行方」に焦点を当てて、皆さんの疑問を解消したいと思います。
契約期間が満了したら店舗は閉店する?実は違うんです!
「20年契約のテナントが20年経ったらどうなると思いますか?」と聞くと、「契約期間が終わったんだから閉店するんじゃない?」と答える方が多いかもしれませんね。
ところが、実際のところは、店舗の閉店と契約期間にはあまり関係がありません。
- 売上が悪ければ、契約の途中でも閉店することがあります。
- 逆に、売上が良ければ、契約期間が満了になっても、多くの店舗は営業を継続します。
契約期間に合わせて閉店する店舗は、ほとんどないと言っても過言ではないでしょう。
では、ロードサイド店舗でよく見られる「建設協力金方式」の場合、契約期間が過ぎたり、途中で解約したりすると、一体どうなるのでしょうか?
建設協力金方式とは?
まず、建設協力金方式について簡単にご説明します。これは、テナントが建築費の全部または一部を地主様に預け、その資金で店舗を建ててもらう契約のことです。
預けた建設協力金は、地主様がテナントに返すことになりますが、その返済方法のほとんどは、契約期間にわたって(例:20年契約なら240ヶ月に分割して)家賃から相殺する形が取られます。
例えば、建設協力金4,800万円、20年契約、家賃80万円のケースを考えてみましょう。 地主様は毎月20万円ずつ(4,800万円 ÷ 240ヶ月)を家賃から相殺して返済していくことになります。つまり、契約上の家賃は80万円でも、テナントが実際に振り込む家賃は毎月60万円、地主様が受け取る手取りも60万円、ということになります。
この相殺が20年間続けば、ちょうど建設協力金が返済し終わる、という仕組みです。
シナリオ1:契約期間の途中でテナントが退店する場合
さて、もしテナント様が20年契約の途中で、例えば10年目で中途解約することになったらどうなるでしょうか?
この時点では、地主様は毎月20万円ずつ返済しているので、10年でちょうど半分の2,400万円を返済し終えています。では、残りの2,400万円を地主様はテナントに返さなければならないのでしょうか?
実は、ほとんどの賃貸借契約では、テナントが中途解約する場合には、テナントは建設協力金の残額の返還請求権を「違約金」として放棄するという契約になっているのです。
つまり、このケースでは、地主様は未返還分2,400万円を違約金として没収することになります。地主様にとっては、ありがたい条項と言えるかもしれませんね。
シナリオ2:契約期間満了後もテナントが営業を継続する場合
ロードサイド店舗では、このケースが最も多いと言われています。
20年間で建設協力金の返済が終わり、地主様はようやく4,800万円全額を返し終えた!これで晴れて契約通りの家賃80万円がテナントから振り込まれるぞ!…と、期待しますよね。
しかし、ここが落とし穴になりがちなポイントです。
多くのテナント様からは、契約終了時に「賃料を20万円下げて60万円にしてもらえないか」と交渉が入るのです。つまり、これまで建設協力金の返済分として相殺されていた20万円分の家賃を、今後も下げてほしい、という要望です。
テナント側の言い分としては「振り込む家賃はこれまでと同じ60万円ですよ」となります。
もちろん、地主様側から「60万円に下げるなら出て行ってもらって結構です」と交渉することも可能です。しかし、私の経験上、多くの場合、地主様は「今まで20年間借りてくれたのだから」「受け取る金額が同じだから」といった理由で、しぶしぶ承諾しているケースが多いようです。
そのため、建築会社や不動産会社が、ロードサイド店舗の地主様との契約時に「最初の20年間は60万円の手取りだけど、20年後から30年までの10年間は手取りが80万円になるから、30年間の平均手取り収入は67万円になりますよ」といったシミュレーションを作成することがありますが、実際にはなかなかそうはいかないため、地主様は注意が必要です。
まとめ:建設協力金方式は「家賃の前払い」のようなもの?
建設協力金方式は、地主様にとっては安定したテナント誘致と建設資金の確保、テナントにとっては初期投資を抑えつつ希望の立地に出店できるメリットがあります。
しかし、契約期間の終了と賃料の関係については、しばしば地主様の期待とテナント側の現実との間にギャップが生じがちです。地主様は、契約満了後の賃料についてテナントから値下げ交渉がある可能性を念頭に置いておくことが重要です。
これはまるで、「家賃の前払い」と「ローンの相殺」が組み合わさったようなものだと考えると分かりやすいかもしれません。テナントは家賃を割引してもらいながらローンを返済している感覚で、ローンが完済しても、実際の支払額が変わらないなら割引前の金額に戻ることに抵抗を感じる、といったところでしょうか。
今後の土地活用の参考にしていただければ幸いです。
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