賃貸借契約書の交渉術、今回は「賃料協議」についてです。家主様にとって、テナントとの賃料交渉で最も強気になれるのは、賃貸借契約書を締結するその時だけです。特に、良い物件を持ち、複数のテナントから出店要望があり、テナント同士を競争させられるような状況では、提示される賃料額が上がっていくこともあります。しかし、本当に大切なのは、その賃料が10年、20年と継続して支払われ続けるかどうかですよね。
家主様の願い「賃料固定」、その実情は?
多くの家主様の要望として、「賃料協議をなくしたい」あるいは「20年固定賃料にしたい」という声を聞きます。
実際の賃貸借契約書には、賃料交渉の方法として主に2つのパターンが併記されていることが多いです。
- 3年ごとのように期間を決め、そのタイミングで賃料の増減について協議する
- 経済情勢の急激な変化などがあった場合、その都度協議する
しかし、この2つが併記されている場合、実は前者の「期間を決めての協議」は実質ないに等しいです。
現実の賃料交渉:増額は稀、値下げが常態化?
私も家主様にテナントを紹介する立場として心苦しいのですが、実際には3年ごとのタイミングで賃料協議をしようとするテナントは少数派です。これはつまり、**「いつでもテナントの都合で値下げの交渉がある」**ということを意味します。また、「増減を協議する」と言っても、賃料が増えるケースはほとんどなく、実際には下げるという交渉しかないのが現実です。
特に、チェーン展開されている大手のテナントほど、この賃料の値下げ交渉は頻繁に行われます。景気が悪くなると、通常は新規店舗の開発を行う担当者の仕事が減り、会社から「新しい店舗を出す代わりに賃料の減額交渉をしてこい」という指示が出されるため、減額の申し入れが増えるのです。
賃料固定は難しい!「借地借家法」の壁
家主様の中には、賃貸借契約書の交渉中に「賃料の増減について話し合う」という文言を契約書から削除してほしいと要望されることがあります。
しかし、ここで重要になるのが**「借地借家法」**です。この法律では、周辺の家賃相場と比較して現在の家賃が高いと借主(テナント)が判断した場合、家賃の値下げを請求する権利があると明確に定められています。
たとえ賃貸借契約書で賃料の増減について話し合うという文言を削除したとしても、借地借家法で定められているテナントの「減額請求権」は残るのです。短期間の定期借家契約であれば、貸主の賃料減額交渉権をなくす契約も可能ではありますが、その場合、長期契約でテナントに貸すメリットが失われてしまいます。
結論として、賃貸借契約書でどのような取り決めをしようとも、20年間賃料を固定するという交渉は非常に難しいと言えるでしょう。
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